表示ラベルが前提
添加物を確認
要否を確認
輸入規制を確認
1. 中国食品輸出は「ラベルだけ直せばよい」ではない
中国向け食品輸出では、パッケージの中国語翻訳だけを先に進めてしまうケースがあります。しかし実務上は、ラベル表示、食品安全国家標準(GB)、食品添加物、原産地・輸入者表示、海外製造企業登録、証明書の有無がつながっています。どれか一つだけを見ても、通関や販売の可否は判断しにくいです。
特に日本側で「一般食品」と考えている商品でも、中国側では飲料、菓子、健康食品、乳製品、特殊食品、酒類など別の規制体系に入ることがあります。まずはHSコード、商品分類、原材料、製造場所、販売形態を整理し、輸入者や専門機関と同じ前提で確認できる状態にすることが入口です。
越境EC小売輸入と一般貿易輸入では、対象商品、プラットフォーム、税制、ラベル・登録実務の扱いが異なる場合があります。本記事は主に「中国国内で流通させる一般貿易寄りの確認項目」を中心に整理しています。
2. 中国語ラベルで最低限見る項目
ジェトロの品目別輸出ガイドでは、中国に輸出する包装済み食品・食品添加物には中国語の表示ラベルが必要と説明されています。食品名、原材料リスト、正味含有量、原産国または地域、輸入事業者の名称・住所・連絡先など、基本項目の確認が必要です。
ここで大事なのは、日本語表示の単純翻訳にしないことです。中国語の商品名が食品の「真の属性」を示しているか、添加物名が中国の通用名称と合っているか、アレルゲンや保存条件の書き方に問題がないかを確認します。宣伝文句も、効能効果や健康訴求に見える表現は慎重に扱うべきです。
| 確認項目 | 実務で見るポイント | 注意度 |
|---|---|---|
| 食品名 | ブランド名ではなく、食品の属性が分かる名称になっているか。日本独自の商品名は補足が必要になりやすい。 | 高 |
| 原材料・添加物 | 中国語の通用名称、配合順、食品添加物の機能表示を確認。日本で使える添加物でも中国で同じとは限らない。 | 高 |
| 正味含有量・規格 | 単位、内包個数、セット商品の表記を確認。複数個入り商品では仕様の書き方に注意する。 | 中 |
| 原産国・輸入者 | 原産国または地域、輸入事業者・代理業者・販売者の情報を中国側流通実態と合わせる。 | 高 |
| 日付・保存条件 | 生産日、賞味期限、保存条件、ロット管理の表記を確認。貼付ラベルで対応する場合も剥がれ・読みやすさに注意。 | 中 |
3. GB 7718-2025で意識したい変化
中国の包装済み食品表示では、GB 7718(包装済み食品表示ラベル通則)が基本の一つです。国家衛生健康委員会のQ&Aでは、GB 7718-2025について、包装済み食品の範囲、直接消費者向け・非直接消費者向けの表示、デジタルラベル、原材料・添加物の表示などが説明されています。
実務上は「今すぐすべてを自社で読み込む」より、輸出予定品の分類とラベル原稿を用意し、現地輸入者、検査機関、ラベル専門会社に確認してもらう進め方が現実的です。移行期間中は旧基準・新基準の扱い、既存在庫、貼付ラベルの運用も絡むため、出荷時点の適用ルールを確認する必要があります。
4. GACC海外製造企業登録は「誰が登録するか」を先に決める
中国向け食品輸出では、海外製造企業の登録制度も重要です。2026年6月1日施行予定の新しいGACC関連規定について、中国大使館の政策ガイドでは、登録方法の整理、企業自身による申請、特定食品での主管当局推薦、リスト登録、事後監督などが説明されています。
日本企業にとって実務上の論点は、登録の要否だけでなく、誰が手続きを主導するかです。製造者、輸出者、輸入者、商社、ブランドオーナーが分かれている場合、どの施設が登録対象になるのか、登録番号を誰が管理するのか、輸入者変更時に情報を引き継げるのかを事前に決める必要があります。
| 関係者 | 確認したい役割 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 日本の製造者 | 製造施設、工程、商品分類、登録情報の正確性 | OEM品でブランド会社と製造者が異なる場合の責任分担 |
| 輸出者・商社 | HSコード、インボイス、原産地・証明書、船積み書類 | 商品説明とラベル・通関書類の不一致 |
| 中国側輸入者 | 通関、輸入者表示、中国国内販売、行政対応 | 輸入者変更時のラベル・登録・在庫対応 |
| 専門機関 | ラベル審査、成分確認、規格照合、必要証明の確認 | 商品分類の前提がずれると確認結果もずれる |
5. 日本産食品は原発関連規制・証明書も確認する
中国向け食品輸出では、食品表示やGACC登録とは別に、日本産食品に対する輸入規制や証明書の問題があります。農林水産省の中国向け輸出手続ページでは、ALPS処理水放出後の水産物輸出再開に関する技術要件、認定施設の再登録、放射性ストロンチウム・トリチウム検査などの情報が掲載されています。
水産物以外でも、産地、品目、加工地によって確認すべき資料が変わります。商談段階では「中国で売れるか」だけでなく、輸出元の都道府県、最終加工地、原料原産地、証明書の発行可否を早めに確認した方が安全です。
6. 商談前チェックリスト
中国向け食品輸出を初めて検討する段階では、いきなり販売計画を細かく作るより、商品ごとの確認表を作る方が実務的です。以下の項目を1商品ずつ埋めると、輸入者や専門機関との会話が進めやすくなります。
- 商品分類とHSコードの候補を整理する。 菓子、飲料、酒類、健康食品、乳製品など、中国側分類で確認する。
- 原材料・添加物・アレルゲンを一覧化する。 日本語ラベル、配合表、規格書、製造工程の情報をそろえる。
- 中国語ラベル原稿を作る前に禁止・制限表現を確認する。 健康効果、治療効果、機能性を示す表現は慎重に扱う。
- GACC登録の要否と対象施設を確認する。 製造者、加工者、保管者、OEM先のどこが関係するかを整理する。
- 輸入者との役割分担を書面化する。 ラベル責任、通関、検査、証明書、返品・行政対応を誰が担うか確認する。
- 初回は小ロットで通関・販売テストを行う。 ラベル修正や追加資料の可能性を見込み、発売日を詰めすぎない。
7. まとめ:食品輸出は「商品力」と「書類力」の両方が必要
中国食品市場は大きく、日本ブランドに関心を持つ消費者もいます。しかし、実際に棚に並べるまでには、ラベル、GB規格、GACC登録、証明書、輸入者責任という地味な確認作業があります。ここを軽く見ると、商談後に通関や販売開始が止まりやすくなります。
最初から完璧な制度分析をする必要はありません。まずは商品ごとに分類、原材料、製造施設、販売形態、輸入者を整理し、公式情報と専門機関で確認する。この順番を守るだけで、無駄なラベル作成や商談の手戻りをかなり減らせます。