Tmall Global(天猫国際)、JD(京東) Worldwide、Douyin EC(中国版TikTokのEC)等は、ブランド授権、海外販売証明、商標、成分表、検査報告、製造者情報、商品責任保険などを独自に求めることがあります。法令上のNMPA免除と、出店・出品審査の通過は別問題です。
1. 越境EC小売輸入と一般貿易
中国向け化粧品販売を検討する際、最初に区別すべきなのが「跨境電子商務零售進口(越境EC小売輸入)」と「一般貿易」という2つの輸入形態です。この2つは、必要な許認可、通関手続き、税制がそれぞれ異なります。
一般貿易は、卸売や小売店舗への大量供給を前提とした輸入形態で、化粧品であれば原則として販売前にNMPA(国家薬品監督管理局)への登録・届出が必要です。一方、越境EC小売輸入(1210・9610)は、建前上「消費者個人が海外商品を購入する」個人使用目的の輸入として扱われ、一定の条件を満たせば初回のNMPA登録・届出が原則として免除されます。この違いを理解しないまま販売方式を決めると、通関や出店審査で想定外の手続きが必要になることがあります。
2. 越境ECで販売する6条件
越境EC小売輸入でNMPA登録・届出の免除を受けるには、一般的に次のような条件を満たす必要があるとされています。個別の商品・プラットフォームによって扱いが変わるため、あくまで確認の出発点として捉えてください。
3. NMPA登録・届出の境界
NMPAの登録・届出制度は、化粧品を「特殊化粧品」と「普通化粧品」に分け、特殊化粧品は登録、普通化粧品は届出が必要という枠組みになっています。一般貿易でこの枠組みに沿った手続きを行う場合、特殊化粧品は数年単位の試験・審査期間がかかることもあります。
越境EC小売輸入の免除は、この登録・届出の「初回手続き」を原則不要にするものであり、品質・安全性の責任や、広告表現の規制まで免除するものではありません。次のセクションで扱う特殊化粧品の分類を理解しておくと、どの商品が一般貿易向きで、どの商品が越境EC向きかを判断しやすくなります。
4. 特殊化粧品の正しい分類と注意点
現行の「化粧品監督管理条例」で特殊化粧品に該当するのは、染毛、パーマ、シミ取り・美白、日焼け止め、脱毛防止、および新しい効能を標榜する化粧品です。旧制度で特殊用途に含まれていた脱毛・デオドラント等を、そのまま現行区分へ当てはめる説明は正確ではありません。
| 商品・訴求 | 一般貿易 | 越境EC小売輸入 | 実務上の注意 |
|---|---|---|---|
| 日焼け止め・美白・染毛等 | 特殊化粧品として登録 | 制度条件を満たせば初回登録要件は原則免除 | プラットフォームのカテゴリ審査と中国語訴求を事前確認 |
| 保湿・洗浄・メイク等 | 普通化粧品として届出 | 制度条件を満たせば初回届出要件は原則免除 | 商品コード、成分、海外販売証明を準備 |
| 医療・治療を想起させる訴求 | 化粧品の範囲を超えるおそれ | 「治療」「発毛」「炎症を治す」等を安易に翻訳しない | |
5. 成分確認と販売前に揃える資料
越境EC小売輸入の免除原則があっても、品質安全責任まで免除されるわけではありません。成分表に数値を当てはめた一律判定は避け、商品単位で最新の中国化粧品安全技術規範、禁止・制限原料、使用部位・濃度・警告表示を確認します。
| 確認資料 | 目的 | 実務ポイント |
|---|---|---|
| 全成分・INCI名・配合情報 | 禁止・制限原料、アレルゲン、使用条件の確認 | 日本語の商品表示だけでなく製造元の正式処方を使う |
| 日本での合法販売証明 | 正規商品・海外流通商品の確認 | 販売実績、製造販売元、製造所、商品写真を一致させる |
| 安全性・品質資料 | プラットフォーム審査、苦情、回収対応 | 検査報告、GMP関連資料、SDS等を商品特性に応じて準備 |
| 商標・ブランド授権 | 正規販売権と知的財産の確認 | 店舗運営会社、TP会社、物流会社の使用範囲を明記 |
| 中国語の商品ページ原稿 | 表示・広告リスクの管理 | 成分説明、効能、比較、No.1表現、医療表現を公開前に承認 |
6. 健康食品・サプリは化粧品と分けて判断する
健康食品・サプリも、ポジティブリスト内の商品を越境EC小売輸入の条件で販売する場合は、初回輸入の許可・登録・届出を原則適用しない枠組みがあります。しかし、中国国内で「保健食品」として一般流通させる手続きや、食品の海外製造企業に関するGACC手続きとは制度が別です。
「食品・健康食品は越境ECでもすべてGACC工場登録が必須」と一律に断定するのは適切ではありません。1210・9610の越境EC小売輸入か、一般貿易か、商品がポジティブリストに含まれるか、輸入申告主体・製造者・商品分類が何かを確認して判断します。
また、越境ECで販売できることは、疾病予防・治療や保健機能を自由に表示できることを意味しません。「血糖値を下げる」「関節痛を改善する」等の表現は、商品分類と表示根拠を確認せずに使用しないでください。成分含有量、摂取方法、対象者、注意事項を事実に基づいて表示し、広告原稿は別途審査します。
7. 出品前チェックリストと公式根拠
| 確認項目 | 判断内容 |
|---|---|
| 輸入方式 | 1210、9610、一般貿易のどれか。契約書と税関申告方式が一致しているか |
| 商品リスト | 2022年版ポジティブリストのHSコード・備考に該当するか |
| 販売対象 | 中国の個人消費者による個人使用か。店舗・卸への再販売が混在していないか |
| NMPA | 一般貿易なら普通化粧品届出/特殊化粧品登録。越境ECなら免除条件と独自審査を確認 |
| 証憑・追跡 | 正規仕入れ、ブランド授権、成分、製造者、ロット、苦情・回収記録を保存できるか |
| 広告・表示 | 中国語の商品ページ、KOL投稿、動画台本、画像内コピーを公開前に承認したか |
・国務院政策例行吹風会:越境EC小売輸入の個人使用扱い・登録届出免除・購入限度
・中国政府網:越境EC小売輸入商品リスト調整公告(2022年第7号)
・中国政府網:化粧品監督管理条例