20,155件
特殊化粧品
登録申請受理
511,974件
普通化粧品
届出
169個
新原料
届出公示
8,050件
歯磨き粉
届出

1. 2025年報告の読み方:市場規模より「制度の成熟」を見る

2025年度化粧品審評報告は、売上ランキングやブランド人気を示す資料ではありません。むしろ、どの種類の化粧品が登録・届出され、どの地域に企業が集まり、新原料や標準化がどの段階まで進んだかを示す「制度側の年次レポート」です。

報告書によれば、2025年末時点で中国には化粧品登録者・届出者が22,952社、中国国内責任者が3,769社、製造企業が6,119社ありました。中国市場は大きいだけでなく、制度対応を行うプレイヤーの層も厚くなっています。

2. 国産比率の高さ:日本企業は「外資優位」を前提にできない

2025年の特殊化粧品登録申請では、国産化粧品が18,657件で全体の92.6%を占めました。承認された特殊化粧品登録申請でも、国産化粧品は18,591件、全体の92.2%です。普通化粧品届出では国産普通化粧品が499,612件で97.6%を占めました。

この数字は、中国コスメ市場で国産ブランドの存在感が一過性ではないことを示します。外資・日本ブランドは「日本製だから高品質」とだけ言えばよい時代ではなく、効能表示、成分説明、安全評価、価格帯、チャネル運用まで含めて、中国企業と同じ土俵で比較されます。

項目2025年の主な数字日本企業への示唆
特殊化粧品登録申請20,155件。国産比率92.6%国産競争が強い 美白・染髪・日焼け止めなどは規制対応と差別化が同時に必要。
普通化粧品届出511,974件。国産比率97.6%商品投入が多い 保湿・清潔・メイクアップ系は商品数が多く、埋もれやすい。
輸出専用届出71,374件、前年比14.5%増中国発ブランドの海外展開 中国ブランドの海外展開も競争要因になる。
歯磨き粉届出8,050件。国産比率95.8%口腔ケアも制度化 化粧品隣接領域として管理が細かくなる。

3. 特殊化粧品:染髪・美白・日焼け止めが審査の中心

特殊化粧品の受理件数では、染髪類が7,255件、シミ取り・美白類が6,434件、物理的カバーによるシミ取り・美白類が2,319件とされています。承認された初回登録では、染髪類4,080件、シミ取り・美白類3,920件、日焼け止め類1,357件が主要カテゴリです。

日本企業にとって、美白・日焼け止め・ヘアカラーは魅力のあるカテゴリですが、中国では効能評価、試験資料、表示、原料使用、登録審査の負荷が高くなりやすい領域です。商品企画段階から「どの効能を中国で正式に主張するのか」を決める必要があります。

実務メモ:日本語の「透明感」「肌を明るく見せる」「エイジングケア」などの表現は、中国語に置き換えると効能宣称や広告表現の問題になりやすい場合があります。単純翻訳ではなく、中国側のカテゴリと表示ルールに合わせた確認が必要です。

4. 新原料171件:イノベーション支援は本格化している

2025年は、新原料の登録申請が7件、登録承認が2件、新規届出公示が169個でした。中国食品薬品網は、登録承認2件と届出公示169個を合わせて「登録・届出された新原料171個」と報じています。報告書では、新原料届出公示が過去最高水準であることも読み取れます。

特に注目すべきは、「第14次五カ年計画」期間に届出公示された新原料376件のうち、国産新原料が314件、83.5%を占めた点です。中国は単に海外原料を輸入して配合する市場ではなく、国内原料開発を制度面から育てる段階に入っています。

01
新原料の申請ルート整備
新原料の登録・届出資料に関する技術通則、安全使用履歴、情報更新ガイドなどが整備されつつある。
02
関連製品との同期申報
新原料と、それを使う特殊化粧品を同時に申請しやすくする仕組みが進む。
03
国産代替と特色原料
中国独自原料、グリーン・低炭素、国産代替が政策上の重点になりやすい。

5. 地域集中:広東・上海・浙江・江蘇・山東を見る

報告書では、特殊化粧品の国産品初回登録、普通化粧品届出、新原料届出、歯磨き粉届出のいずれでも、広東省の存在感が目立ちます。普通化粧品届出の上位5省市は広東、浙江、上海、江蘇、山東で、合計94.9%を占めます。

日本企業が中国でOEM、ODM、原料調達、試験機関、登録代理、EC運営を検討する場合、この地域集中は実務上の意味を持ちます。パートナー候補は多い一方、品質・表示・安全評価・広告表現の責任分担を契約で明確にしないと、スピードが速い分だけ手戻りも起きやすくなります。

6. 標準化が進む:ルールは「細かく、電子化され、統一される」方向へ

2025年には、6項目の強制国家標準の制定・改訂が始まり、45項目の化粧品標準が審査を通過しました。対象は原料管理、検査方法、人体安全評価方法など広い範囲に及びます。また、「既使用化粧品原料目録」の動的調整メカニズムも整備され、2025年には107個の原料情報が調整されました。

これは、規制が厳しくなるという単純な話ではありません。むしろ、企業側から見ると「何を準備すべきか」がより明確になる面もあります。ただし、曖昧な表示、古い原料情報、簡易な安全評価で走る商品は、以前よりリスクが見えやすくなります。

7. 日本企業が今確認したい5項目

  • 自社商品が特殊化粧品に該当するか。 美白、日焼け止め、染髪、抜け毛予防などは登録・試験負荷が高くなりやすい。
  • 中国語の効能宣称を先に確認する。 日本語コピーを後から翻訳するのではなく、中国側カテゴリに合わせて設計する。
  • 原料情報と安全評価資料を整理する。 原料目録、安全使用情報、既存データの有無が審査・届出の前提になる。
  • 中国国内責任者・届出代理・輸入者の役割を分ける。 販売責任、資料管理、行政対応、リコール時の連絡先を曖昧にしない。
  • 中国発ブランドの海外展開も見る。 輸出専用届出の増加は、中国ブランドが海外市場でも競合化する可能性を示す。

8. まとめ:2025年報告は「中国コスメの制度産業化」を示している

2025年度化粧品審評報告から見えるのは、中国化粧品市場が単なる巨大消費市場から、登録、届出、安全評価、新原料、標準化、地域クラスターを備えた制度産業へ変わっている姿です。

日本企業は、ブランド力や品質感だけでなく、中国語表示、効能評価、安全資料、原料戦略、現地パートナー管理を早い段階から整える必要があります。過度に怖がる必要はありませんが、「売れるか」の前に「通せるか、説明できるか、続けられるか」を確認することが、中国コスメ市場の現実的な第一歩です。

特集の結論
中国化粧品市場は、国産ブランドの量、新原料の制度支援、標準化の加速が同時に進んでいます。日本企業に必要なのは、華やかな商品企画だけでなく、登録・届出・安全評価を最初から織り込む実務設計です。