1. 中国広告法の基本構造
「中华人民共和国广告法」(中国広告法)は1994年に制定され、2015年に全面改正、2021年にさらに追加改正が行われました。日本の景品表示法に相当する法律ですが、規制の範囲・罰則の重さ・適用対象の広さは日本を大きく上回ります。
この法律が定めるのは主に3つの領域です。①禁止表現(最上級・絶対的表現、虚偽・誇大表示)、②特別規制品目(医薬品・医療機器・食品・化粧品・アルコール・不動産・金融商品など)、③三者の義務と連帯責任(広告主・広告代理店・広告媒体社)。
📋 中国広告法が定める三者の責任
- 広告主(日系企業):広告内容の適法性を自ら確認する義務。「代理店に任せた」は免責にならない。
- 広告代理店:違法広告の制作・代理を拒否する義務。関与すれば連帯責任を問われる。
- 広告媒体社(プラットフォーム含む):違法広告の掲載拒否・削除義務。天猫・抖音なども対象。
2. 適用範囲:どこまでが「広告」か
中国広告法における「広告」の定義は非常に広く、商業目的で商品・サービスを宣伝するすべての表現が対象となります。2023年施行の「互联网广告管理办法」(インターネット広告管理弁法)によって、以下のコンテンツも明確に広告規制の対象となりました。
- 天猫・JD.com・拼多多などECプラットフォームの商品ページ・タイトル
- 小紅書・抖音・WeChatでのKOL(インフルエンサー)投稿(報酬が発生する場合)
- ライブコマース中のトークスクリプト
- 越境EC専用サイト(Tmall Global・京東国際など)の商品説明
- 公式アカウントの投稿・ミニプログラム内のコンテンツ
つまり日本の本社が作成したブランドコピーやパッケージ表現を、そのまま中国向けコンテンツに使い回すことは非常に危険です。日本では問題のない表現が、中国広告法のもとでは即違反となるケースが多数あります。
3. 違反時の罰則:段階別ペナルティ
| 違反の種類 | 罰則 | 付加的措置 |
|---|---|---|
| 一般的な違法広告(禁止表現の使用等) | 広告費の3〜5倍、または20万元以下の罰金 | 違法広告の停止命令・是正勧告 |
| 虚偽広告(効果を偽る・存在しない成分の表示等) | 広告費の5倍以上、または500万元以下 | 営業許可停止・法人代表者への個人責任追及 |
| 特別規制品目(医薬品・食品等)の違反 | 広告費の5〜10倍、または100万元以上 | ブラックリスト登録・ECプラットフォームからの出品停止 |
| 未成年者保護規定違反 | 20万〜100万元 | 刑事責任の可能性あり |
| 軽微な違反(初回・自主是正あり) | 警告・広告費相当額の罰金 | 行政指導レベルで処理されることも |
⚠️ ECプラットフォームによる独自制裁も注意
行政処分とは別に、天猫・京東・拼多多などのプラットフォームは独自の審査基準を持ち、違反と判断した商品ページを一方的に非表示・出品停止にします。法律上の罰則よりも、この即時の販売機会喪失のほうが日系企業へのダメージが大きいケースも多いです。プラットフォーム規約と広告法の両方を確認する必要があります。
4. 特別規制品目:日系企業が最も注意すべき分野
中国広告法は特定の商品カテゴリに対して、一般ルールに加えた追加規制を課しています。日系企業が中国市場に持ち込む製品の多くがこれに該当します。
化粧品・スキンケア
「美白」「しわ取り」「育毛」などの効能表現には国家薬品監督管理局(NMPA)による認可が必要で、認可なしに効能を標榜すれば違反です。日本での「薬用化粧品」表示が中国で通用しない理由はここにあります。また「天然成分100%」「防腐剤ゼロ」などの安全性強調表現も別途規制があります。
健康食品・サプリメント
健康食品は「保健品」として市場監督管理総局の認可が必要で、認可された効能以外の記載は虚偽広告になります。「免疫力を上げる」「がんを予防する」など医療効果を示唆する表現は全面禁止です。
食品全般
食品に対する「疾病リスク低減」「生理活性機能」の標榜は許可制です。「血糖値を下げる」「血圧に良い」などの表現は、認可なしには使えません。日本の機能性表示食品制度の表現をそのまま転用するのは危険です。
5. 2021年改正のポイント:何が強化されたか
2021年の改正では、主に以下の点が強化されました。
- 未成年者向け広告規制の強化:子供向け食品・教育サービスへの広告制限が厳格化。学習塾・オンライン教育への広告は大幅制限(双減政策と連動)。
- 医療美容広告の厳格化:整形・美容医療への過度な誘引表現が禁止に。
- 広告主の自己審査義務明記:広告主が事前に内容の合法性を確認する義務が明確化。第三者任せの免責を封じた。
- ネット広告への適用強化:インフルエンサー経由の広告を「広告」と明示する義務(2023年弁法で詳細化)。
6. 日系企業が今すぐやるべき3つのアクション
- 中国向け全コンテンツの棚卸し:天猫・越境EC・SNS・KOL素材・パッケージ表示を一覧化し、現状の表現を把握する。
- 禁止表現の除去:「最高」「No.1」「絶対」「完全」等の最上級・絶対的表現、「〜に効く」「医師が推薦」等の効能表現を全削除または認可取得。
- KOL・代理店への周知徹底:依頼するインフルエンサーや現地代理店に対して、日本ブランドの広告素材の中国広告法上のリスクを共有する。代理店が違反しても、広告主への責任追及が可能な点を全員が理解する必要がある。