371億元
POP MART 2025年売上高
前年比184.7%増
38.1%
THE MONSTERSの売上構成比
LABUBUを含む主力IP
43.8%
海外売上比率
2025年実績
9月まで
大阪・LUCUA 1100の
期間限定出店

1. LABUBUは「中国版ガチャ」ではなく、SNS時代のキャラクター商品

LABUBUは、香港出身アーティストKasing Lung氏が生み出したキャラクター群「THE MONSTERS」の代表的な存在だ。大きな耳、いたずらっぽい表情、少し不気味だけれどかわいい造形が特徴で、ぬいぐるみキーホルダーやフィギュアとして売られている。日本でいう「かわいい」だけではなく、少しクセのあるデザインが、バッグチャーム、写真投稿、開封動画との相性を高めた。

POP MARTの強さは、単に人形を売っている点ではない。消費者が「どのデザインが出るかわからない」ブラインドボックス、数量限定、店舗での再入荷、SNSでの開封、二次流通での価格上昇まで含めて、購買体験そのものを商品化している。これは日本人にとっても、ガチャ、トレカ、推し活グッズ、限定スニーカーに近い感覚で理解しやすい。

図1|POP MARTの売上高推移(2023〜2025年)
出典:POP MART年次決算資料をもとに編集部作成
2025年はLABUBUを含むTHE MONSTERSの伸びと海外展開が成長を押し上げた。

2. なぜ日本でも伸びやすいのか——生活者目線の5つの理由

日本で中国発ブランドと聞くと、EV、スマホ、越境ECのような硬いテーマを想像しがちだ。しかしPOP MARTは、日常のバッグ、机、部屋、SNS投稿に入り込むタイプの商品である。ここが一般消費者に届きやすい。

01
バッグにつけるだけで見える
高額な家電や車と違い、数千円台の小物は試しやすい。外出先やSNS写真にも映りやすく、口コミが自然に起きる。
02
開封動画に向いている
ブラインドボックスは「何が出るか」を見せるだけで短尺動画になる。YouTubeショート、TikTok、Xとの相性が高い。
03
推し活と相性が良い
キャラクター別、シリーズ別、色違いで集める動機が生まれる。自分の推しを持つ文化は日本にも強く根付いている。
04
「中国製」の印象を変える
安さではなく、デザイン、世界観、店舗体験で選ばれる。中国発ブランドの見られ方を変える事例になっている。
05
議論が起きやすい
転売、偽物、品薄商法、依存的な買い方など、賛否が生まれやすい。SNSで話題が伸びる条件を満たしている。
06
商業施設との相性
駅ビルやポップアップに置くと、ファン以外も足を止めやすい。大阪・LUCUA 1100の期間限定出店もこの文脈で見られる。

3. POP MARTのビジネスモデル——「作る会社」から「IPを回す会社」へ

POP MARTは、玩具を大量生産するだけの会社ではない。アーティストIPを発掘し、商品化し、店舗・自販機・EC・海外店舗・コラボで回収する仕組みを作っている。中国企業の競争力を「安い製造」だけで見ると、この変化を見落とす。

2025年の決算では、売上高が371.2億元に拡大し、海外売上も全体の4割超に達した。地域別では中国本土がなお最大だが、アジア太平洋、米州、欧州・その他も伸びている。これは中国国内の流行で終わらず、キャラクターIPが世界市場で売れる段階に入ったことを示す。

要素POP MARTの特徴日本企業への見方
IP開発LABUBU、MOLLY、SKULLPANDA、CRYBABYなど複数IPを展開単発ヒットではなく、複数キャラクターの育成力が重要
販売体験ブラインドボックス、限定品、店舗行列、開封体験を設計商品そのものだけでなく、買う瞬間をどう演出するか
SNS拡散開封、交換、バッグチャーム写真、二次流通価格が話題化広告よりもユーザー投稿が伸びる設計が強い
海外展開アジア、米州、欧州で店舗・ポップアップを拡大中国発ブランドでも、現地の商業施設に入り込める
リスク人気IPへの依存、偽物、転売、ブームの反動熱狂を作るほど、供給管理とブランド保護が難しくなる
図2|2025年の売上構成イメージ(地域別)
出典:POP MART 2025年決算資料
海外合計は43.8%。アジア太平洋だけでなく、米州の伸びも大きい。

4. 強さの裏側——LABUBU依存、転売、偽物問題

一方で、POP MARTの急成長にはわかりやすい不安材料もある。最大の論点は、LABUBUを含むTHE MONSTERSへの依存だ。2025年、THE MONSTERSの売上は141.6億元で、全社売上の38.1%を占めた。これは大ヒットの証拠であると同時に、「次のキャラクターも同じ熱量で売れるのか」という疑問を生む。

また、品薄と限定性は熱狂を作るが、転売と偽物も呼び込みやすい。消費者から見れば「買えない」「高すぎる」「本物かわからない」という不満につながる。ブランド側から見れば、短期的な話題化と長期的な信頼のバランスが難しくなる。

投資判断ではなく、ビジネス観察として見る:この記事では株価や投資判断を目的にしない。重要なのは、LABUBUの熱狂が「中国企業が世界でIPを売る時代」を象徴している点と、同時に「ひとつの流行に依存する怖さ」も見せている点である。

5. 日本企業は何を学べるか——キャラクターより「導線設計」

日本には、アニメ、ゲーム、漫画、キャラクターの強い蓄積がある。それでもPOP MARTから学べる点は多い。特に重要なのは、IPそのものよりも「発見される場所」「買う理由」「投稿される形」「再購入する仕組み」まで一体で設計していることだ。

日本企業が中国やアジアでキャラクター商品を売る場合、「良いキャラを作れば売れる」と考えるだけでは足りない。小紅書や抖音でどう見えるか、店舗でどんな写真が撮られるか、限定品をどの程度出すか、偽物をどう防ぐか、ファン同士の交換や二次流通をどう扱うかまで考える必要がある。

日本市場での見どころ:POP MARTの日本展開は、単なる中国ブランドの上陸ではなく、駅ビル・ポップアップ・SNS・推し活文化がどう結びつくかを見る教材になる。中国ビジネスに関心がない人でも、「なぜこの人形に行列ができるのか」という入口から理解しやすい。

6. まとめ——LABUBUブームは、中国消費ビジネスの見方を変える

LABUBUのブームは、かわいい人形が売れているというだけの話ではない。中国企業が、デザイン、IP、店舗体験、SNS拡散、海外展開を組み合わせて、世界の若い消費者に届くブランドを作り始めているという話である。

もちろん、熱狂は永遠には続かない。THE MONSTERS依存、転売、偽物、供給過多、飽きられるリスクは常にある。だからこそ、POP MARTを見るときは「すごい中国ブランド」と持ち上げるだけでなく、「なぜ伸びたのか」「どこが危ういのか」「日本企業ならどこを真似できるのか」を分けて見るのがよい。

参考資料

#POP MART#LABUBU#中国発ブランド#IPビジネス#推し活