前年比184.7%増
LABUBUを含む主力IP
2025年実績
期間限定出店
1. LABUBUは「中国版ガチャ」ではなく、SNS時代のキャラクター商品
LABUBUは、香港出身アーティストKasing Lung氏が生み出したキャラクター群「THE MONSTERS」の代表的な存在だ。大きな耳、いたずらっぽい表情、少し不気味だけれどかわいい造形が特徴で、ぬいぐるみキーホルダーやフィギュアとして売られている。日本でいう「かわいい」だけではなく、少しクセのあるデザインが、バッグチャーム、写真投稿、開封動画との相性を高めた。
POP MARTの強さは、単に人形を売っている点ではない。消費者が「どのデザインが出るかわからない」ブラインドボックス、数量限定、店舗での再入荷、SNSでの開封、二次流通での価格上昇まで含めて、購買体験そのものを商品化している。これは日本人にとっても、ガチャ、トレカ、推し活グッズ、限定スニーカーに近い感覚で理解しやすい。
2. なぜ日本でも伸びやすいのか——生活者目線の5つの理由
日本で中国発ブランドと聞くと、EV、スマホ、越境ECのような硬いテーマを想像しがちだ。しかしPOP MARTは、日常のバッグ、机、部屋、SNS投稿に入り込むタイプの商品である。ここが一般消費者に届きやすい。
3. POP MARTのビジネスモデル——「作る会社」から「IPを回す会社」へ
POP MARTは、玩具を大量生産するだけの会社ではない。アーティストIPを発掘し、商品化し、店舗・自販機・EC・海外店舗・コラボで回収する仕組みを作っている。中国企業の競争力を「安い製造」だけで見ると、この変化を見落とす。
2025年の決算では、売上高が371.2億元に拡大し、海外売上も全体の4割超に達した。地域別では中国本土がなお最大だが、アジア太平洋、米州、欧州・その他も伸びている。これは中国国内の流行で終わらず、キャラクターIPが世界市場で売れる段階に入ったことを示す。
| 要素 | POP MARTの特徴 | 日本企業への見方 |
|---|---|---|
| IP開発 | LABUBU、MOLLY、SKULLPANDA、CRYBABYなど複数IPを展開 | 単発ヒットではなく、複数キャラクターの育成力が重要 |
| 販売体験 | ブラインドボックス、限定品、店舗行列、開封体験を設計 | 商品そのものだけでなく、買う瞬間をどう演出するか |
| SNS拡散 | 開封、交換、バッグチャーム写真、二次流通価格が話題化 | 広告よりもユーザー投稿が伸びる設計が強い |
| 海外展開 | アジア、米州、欧州で店舗・ポップアップを拡大 | 中国発ブランドでも、現地の商業施設に入り込める |
| リスク | 人気IPへの依存、偽物、転売、ブームの反動 | 熱狂を作るほど、供給管理とブランド保護が難しくなる |
4. 強さの裏側——LABUBU依存、転売、偽物問題
一方で、POP MARTの急成長にはわかりやすい不安材料もある。最大の論点は、LABUBUを含むTHE MONSTERSへの依存だ。2025年、THE MONSTERSの売上は141.6億元で、全社売上の38.1%を占めた。これは大ヒットの証拠であると同時に、「次のキャラクターも同じ熱量で売れるのか」という疑問を生む。
また、品薄と限定性は熱狂を作るが、転売と偽物も呼び込みやすい。消費者から見れば「買えない」「高すぎる」「本物かわからない」という不満につながる。ブランド側から見れば、短期的な話題化と長期的な信頼のバランスが難しくなる。
5. 日本企業は何を学べるか——キャラクターより「導線設計」
日本には、アニメ、ゲーム、漫画、キャラクターの強い蓄積がある。それでもPOP MARTから学べる点は多い。特に重要なのは、IPそのものよりも「発見される場所」「買う理由」「投稿される形」「再購入する仕組み」まで一体で設計していることだ。
日本企業が中国やアジアでキャラクター商品を売る場合、「良いキャラを作れば売れる」と考えるだけでは足りない。小紅書や抖音でどう見えるか、店舗でどんな写真が撮られるか、限定品をどの程度出すか、偽物をどう防ぐか、ファン同士の交換や二次流通をどう扱うかまで考える必要がある。
6. まとめ——LABUBUブームは、中国消費ビジネスの見方を変える
LABUBUのブームは、かわいい人形が売れているというだけの話ではない。中国企業が、デザイン、IP、店舗体験、SNS拡散、海外展開を組み合わせて、世界の若い消費者に届くブランドを作り始めているという話である。
もちろん、熱狂は永遠には続かない。THE MONSTERS依存、転売、偽物、供給過多、飽きられるリスクは常にある。だからこそ、POP MARTを見るときは「すごい中国ブランド」と持ち上げるだけでなく、「なぜ伸びたのか」「どこが危ういのか」「日本企業ならどこを真似できるのか」を分けて見るのがよい。