1. 「健康食品」と「保健食品」を分けて考える
日本企業が中国向けにサプリ、青汁、プロテイン、乳酸菌、酵素、漢方風食品を売る場合、まず確認すべきは「中国でどの分類として販売するのか」です。中国の保健食品は、登録・届出や広告審査が関係する特殊食品の一種です。一方、一般食品として販売する場合は、保健機能や疾病予防・治療効果をうたうことはできません。
この分類を曖昧にしたまま広告を作ると、商品ページでは一般食品なのに、KOL投稿では「血糖対策」「脂肪燃焼」「睡眠改善」といった強い表現が出てしまうことがあります。中国では、ブランド公式素材だけでなく、インフルエンサー投稿やライブ配信の発言もリスクになります。
2. 健康食品広告で避けたい表現
| 危ない表現 | 主なリスク | 安全寄りの方向性 |
|---|---|---|
| 糖尿病を防ぐ、血糖値を下げる | 疾病予防・治療、医薬品的表現 | 食生活をサポート、栄養補給、健康的な生活習慣の一部 |
| 免疫力を劇的に上げる、感染症を防ぐ | 疾病予防と受け取られやすい | 栄養成分の説明にとどめ、機能を断定しない |
| 飲むだけで痩せる、脂肪が溶ける | 効能保証、誇大、消費者誤認 | 運動・食事管理と併用する生活提案に寄せる |
| 医師推薦、薬より安全、治療不要 | 医療的権威利用、薬品比較 | 監修・共同研究の事実がある場合も、範囲と出典を明示する |
3. SNS・ライブコマースで起きやすい落とし穴
健康食品は、短尺動画やライブ配信で売りやすい一方、話し手が熱量で言いすぎるカテゴリです。「私の母がこれで治った」「飲まないと将来危ない」「病院に行く前に試して」といった体験談は、広告主が作った台本でなくても問題になり得ます。
- ライブ配信台本にNGワードを明記し、KOLに事前共有する
- コメント欄で疾病相談が出ても、医療助言風に返答しない
- 商品リンク付きの体験レビューは広告表示の要否を確認する
- 高齢者や健康不安をあおる表現を避ける
4. 健康食品広告の安全チェックリスト
- 一般食品か保健食品か、販売分類を確認する
- 保健食品の場合、広告審査済み内容から外れていないか確認する
- 疾病名、治療、予防、診断、薬品比較の語を削る
- ランキング、試験データ、専門家コメントの出典を明記する
- KOL投稿、ライブ台本、コメント返答ルールを保存する
5. 商品分類別に見る広告表現の作り方
健康食品広告を安全に作るには、最初に「この商品は中国で何として売るのか」を決める必要があります。日本でサプリメントとして売っている商品でも、中国では一般食品、保健食品、特殊医学用途配方食品、医薬品に近い表現を含む商品など、見られ方が変わります。広告表現は、この分類に合わせて設計します。
分類を確認せずに、売れそうなコピーだけ先に作ると、あとから大きく修正することになります。特に「免疫」「血糖」「睡眠」「疲労」「ダイエット」「肝臓」「腸活」は、生活者に刺さりやすい一方で、疾病予防・治療、身体機能の改善保証、医薬品的効能に近づきやすいテーマです。
| 商品分類 | 広告で注意すること | 現場の見方 |
|---|---|---|
| 一般食品 | 保健機能や疾病予防・治療を表示しない | 栄養補給、食生活提案、味・素材・製法を中心にする |
| 保健食品 | 承認・届出された機能範囲を超えない | 広告審査済み内容から外れないように台本化する |
| 越境ECサプリ | 日本語ページの効能を直訳しない | 中国語商品ページ、KOL投稿、ライブ配信で同じ基準を使う |
| 美容・健康系飲料 | 美容訴求と医療的健康訴求が混ざりやすい | 「飲むだけで治る・痩せる」方向に寄せない |
6. 健康食品広告で失敗しやすい5つのパターン
1. 「健康不安」をあおって購入させる
健康食品広告では、生活者の不安を刺激すると反応が出やすくなります。しかし「飲まないと将来危ない」「この症状は病気のサイン」「放置すると悪化する」のような表現は、恐怖訴求や疾病連想につながります。特に高齢者向け、子ども向け、妊婦向けの商品では、過度な不安訴求を避けるべきです。
2. 医師・専門家の権威で効能を保証する
医師、薬剤師、栄養士、大学教授、研究機関の名前を使う場合は、事実関係と表現範囲を慎重に確認します。「医師も認めた」「病院でも使われる」「薬より安心」のような言い方は、医療的効果や権威の不当利用に見えやすいです。監修や共同研究がある場合でも、研究の対象、条件、結果を誇張しないことが重要です。
3. KOLが個人体験で疾病名を出す
小紅書やDouyinでは、KOLが自分や家族の体験として「血糖が下がった」「不眠が治った」「便秘が改善した」と語ることがあります。これは広告主が直接書いたコピーでなくても、案件投稿であればブランドのリスクになります。KOLに渡す資料には、使える表現だけでなく、使ってはいけない疾病名や身体変化の言い方も入れておきます。
4. 日本の機能性表示食品コピーをそのまま使う
日本の機能性表示食品や栄養機能食品の表現は、中国でそのまま使えるとは限りません。制度が違うため、「日本で届出済み」「日本の表示では問題ない」という説明だけでは、中国向け広告の根拠として不十分な場合があります。中国語版では、中国の分類・広告審査・プラットフォーム規約に合わせて再設計します。
5. コメント欄・ライブ中の返答を管理しない
健康食品では、視聴者から「糖尿病でも飲めますか」「薬と併用できますか」「子どもに飲ませていいですか」といった質問が出やすくなります。KOLや客服がその場で医療助言のように回答すると、広告表現以上に危険です。回答テンプレートを作り、医療判断は専門家・医療機関に相談する形へ誘導します。
7. FAQ:中国向け健康食品広告でよくある質問
Q1. 「免疫力アップ」は使えますか?
商品分類と根拠によりますが、一般食品で強く使うのは危険です。感染症予防や疾病予防と受け取られないよう、栄養補給や生活習慣サポートの範囲に抑えるのが基本です。保健食品であっても、承認・届出された機能範囲から外れないように確認します。
Q2. 日本の機能性表示食品なら中国でも機能を言えますか?
日本の制度上の表示が、中国でそのまま通用するわけではありません。中国での販売分類、輸入形態、商品ページ、広告媒体、プラットフォーム規約を踏まえて、中国向けコピーを別途確認する必要があります。
Q3. KOLの「個人の感想です」は免責になりますか?
十分な免責にはなりません。報酬や商品提供がある広告案件で、疾病名や効能保証の体験談を投稿すれば、広告表示と表現内容の両面でリスクがあります。「個人差があります」と添えるだけで強い効能表現が許されるわけではありません。
8. 参考資料
中華人民共和国広告法、互联网广告管理办法、薬品・医療機器・保健食品等広告審査管理暫行弁法、ネット販売特殊食品安全コンプライアンス指針。