対象
越境ECの商品ページも
中国広告法の規制対象
3〜5倍
違反時の罰則
(広告費の3〜5倍)
連帯責任
KOL・代理店・媒体社も
事業者と共同責任
事前審査
Tmall・JD等の
プラットフォームが独自審査

1. 「日本から売っている」だけでは免責にならない

越境ECで中国向け販売を行う際、多くの日本企業が抱く誤解が「中国国内に法人・拠点がないから中国の規制は関係ない」というものです。しかし、これは正確ではありません

中国の広告法(2015年施行・2021年改正)・電子商取引法(2019年)・食品安全法・化粧品監督管理条例(2021年)は、中国のプラットフォームを通じて中国の消費者に向けて販売される商品・サービスの広告表現を規制対象としています。天猫国際(Tmall Global)・京東国際(JD Worldwide)・小紅書などのプラットフォームが中国国内に拠点を持つ以上、プラットフォーム上の商品ページ・広告・KOL投稿は中国法の管轄下に置かれます。

さらに、プラットフォーム自身が独自の広告審査基準を設けており、中国の法律に準拠したチェックを出品者に対して行っています。「法律は知らなかった」という理由で審査を通過することはできません。

⚠️ 経営者が知るべき現実
越境EC経由での違反が発覚した場合、制裁の対象はプラットフォーム上の店舗(出品アカウント)です。アカウント停止・出品削除・違反金の請求は、日本に法人があっても中国ビジネスの継続を実質的に不可能にします。「中国に法人がない」は「無責任でいい」ではなく、「問題が起きたときに対処できない」を意味します。

2. 規制が適用される「場所」と「表現の種類」

越境ECにおける広告表現規制は、出稿・掲載される場所と表現の種類によって適用法令が変わります。以下の3つの区分で整理します。

🔴 確実に対象(広告法)
  • 商品詳細ページ(LP・画像・テキスト)
  • 主図・サムネイルのキャッチコピー
  • プラットフォーム内の有料広告枠
  • 小紅書・抖音の公式店舗からの投稿
  • KOL/KOCへの依頼投稿(PR表記要)
  • ライブ配信中の商品説明・効能訴求
🟡 法令により対象(個別確認要)
  • 化粧品:NMPA化粧品監督管理条例
  • 健康食品:保健食品広告審査弁法
  • 医療機器:医療機器広告審査弁法
  • 食品:食品安全法・GB標準
  • 乳児用品:特別安全規制対象
  • 金融・保険:監督管理規定
⚪ グレーゾーン(要注意)
  • 日本の消費者向け公式サイト(中国からアクセス可能)
  • 越境専用倉庫からの直送品の表現
  • 日本在住KOLによる中国語投稿
  • SNS DM・WeChatによる個別案内
  • 比較サイト・クチコミ集計ページ

3. 商品ページのリスクレベル——カテゴリ別の危険度(グラフ)

商品カテゴリによって、広告表現で問われるリスクの高さと監督当局による取締り強度が異なります。規制の厳しいカテゴリほど、事前の法規チェックが不可欠です。

医薬品・医療機器
最高リスク
保健食品(蓝帽子認定品)
極高
化粧品・スキンケア
健康食品(一般食品)
乳幼児用品・育児用品
飲食料品(一般)
アパレル・雑貨
中低
家電・工業製品
中低

4. 越境ECの商品ページでよく見る「NG表現」の実例

日本語サイトの表現をそのまま中国語に翻訳した結果、中国の法令・プラットフォーム審査に引っかかるケースが頻発しています。以下は典型的なNGパターンです。

表現カテゴリNGの表現例(中国語訳)違反法令・理由安全な代替
最上級・比較「日本でNo.1売上」「他社比2倍の効果」広告法28条・最上級規制「累計販売○万個」(根拠数値で代替)
効能・治療効果「肌荒れを治す」「免疫力を高める」食品安全法・保健食品法「肌の健康維持をサポート」(成分事実のみ)
医師・権威推薦「皮膚科医推薦」「○○大学研究機関採用」広告法・証明書類の提出義務推薦者の書面同意書+証拠書類が必要
ビフォーアフター使用前後の肌状態比較写真化粧品監督管理条例原則禁止。使用シーン写真に差し替え
国家・国旗の使用「日本政府認定」「日本品質」(国旗使用)広告法・国家機関に関する表現規制「日本製」「日本のGMP工場製造」
科学的根拠なし数値「98%の人が効果を実感」(根拠なし)広告法・虚偽広告正式な消費者調査結果と調査概要の開示

5. KOL投稿・ライブ配信への規制——事業者責任の範囲

「投稿したのはKOLであり、弊社ではない」——この論理は中国法では通じません。電子商取引法・広告法では、KOL投稿を依頼した事業者(ブランド側)も広告主として連帯責任を負います

事業者が負う責任の範囲

  • KOCが投稿した内容に虚偽表現がある場合:事業者も虚偽広告の責任を問われる可能性がある
  • PR表記がない「ステマ投稿」:2023年施行のインターネット広告管理弁法で明示的に禁止。事業者側に罰則
  • ライブ配信中の発言:出演者(MCや商品紹介者)が述べた効能・比較表現も「広告」として扱われる
  • インフルエンサーへの商品提供(ギフティング):対価なし提供でも宣伝目的が認定されれば広告規制が適用される
実務上の対策:KOL・KOC起用前に、投稿内容のチェックリストを渡し、禁止表現・PR表記義務・証拠書類の提出を契約書に明記することが最低限の予防策です。投稿後の削除や修正を依頼できる条項も重要です。

6. プラットフォーム審査で「弾かれない」ための設計

Tmall Global・JD Worldwide・小紅書は、それぞれ独自の広告審査基準を設けています。審査で弾かれると出品停止・商品削除・アカウント警告につながり、売上機会の損失だけでなく累積違反でアカウント永久停止になるリスクもあります。

プラットフォーム審査の厳しさ特に問われる表現対策
Tmall Global(天猫国際)非常に厳格最上級表現・効能表現・証明書なしの受賞バッジ出品前に自主チェック。証明書類をシステムに登録
JD Worldwide(京東国際)厳格品質認証・比較表現・健康効能中国認証機関による試験報告書の準備が必要
小紅書(投稿・広告)中〜厳格PR未表記・医療的表現・危険成分記載ブランド公式アカウント経由の投稿が審査通過率を上げる
抖音EC(抖音小店)中程度ライブ配信中の発言・効能断定配信前に台本を広告法準拠でチェック

7. 今すぐできる自社チェックリスト

  • 現在の越境EC商品ページに「No.1」「最高」「最上級」「他社比XX%」などの最上級・比較表現がないか確認した
  • 化粧品・健康食品カテゴリの商品ページに「治す」「改善する」「効果がある」などの効能断定表現がないか確認した
  • 「医師推薦」「研究機関採用」「受賞No.1」を掲載している場合、その証拠書類(書面・調査報告)を用意している
  • ビフォーアフター画像の使用が化粧品監督管理条例上NGであることを確認し、代替ビジュアルを用意した
  • KOL・KOC起用時に、投稿内容の事前確認・PR表記義務・禁止表現リストを契約書に明記している
  • プラットフォーム(Tmall/JD)の商品審査基準を最新版で確認し、必要な証明書類を揃えている
  • 越境EC商品ページの中国語テキストを、中国広告法に詳しい専門家がレビューする体制がある
越境EC広告法電子商取引法規制リスクTmall商品ページKOL責任